- VELO-CITY 2015
- 2011年セビリア、2013年ウイーンで開催されたVelo-city (「世界自転車都市大会」ヴァンソンの意訳)が、今年は2013年に欧州環境都市に指定されたフランスのナント市で行われた。3日間のシンポジウム参加費が800ユーロ(食事付き)なので、それだけ自転車ビジネスが育ったきたということだろう。(ただし、『地域に開かれたシンポジウム』を目指すというナント市長のスピーチ通り、地元市民への参加費には別の料金体系を設定)。実際フランス環境省から来た政務大臣も、いささか国際色には欠けるが、「フランスで昨年度300万台!の自転車が売れ(フランスの人口6600万。ドイツ、イギリスに次ぐ。オランダは人口が少ないので意外だが売り上げ台数は少ない)7%の増加率であり、雇用も35000創出された」と自転車の経済効果を強調した。【日本も高級自転車の売れ行きなど、自転車経済をもっと強調しては?】300万台のうち8万台が電動自転車(37%の売り上げ増加)で、高齢社会への対応も伺える。フランス全土での自転車専用道路は現在11000Kmだが国の目標は21000Kmまで持ってゆくことだそうだ。【写真上。ナント駅を降りると自転車タクシーが待っていて、『乗って行って』と誘われるままに、会場まで。自転車は電動式】
【写真下・素敵なレイアウトの会場・地下がシンポジウム大会場、フロアーの両横がワーク ショップ用の小会議室、フロアーの奥はレストラン】
- 「今日は本当に、かつて自動車の代替交通手段の導入が困難な時代に、当時のナント市長と活動した時代を思い出しました。25年です。当時我々が決めたことの結果を本日見てください。目標に向かってぶれることなく信念を追求してきた結果が今日の姿です。
- (ちなみに、経済人口約50万のストラスブール都市共同体では自転車専用道路600Km、駐輪所10000. 人口60万のナント都市共同体では450Kmに対して駐輪所7000 。しかし両都市を見ると、一般市民の自転車利用はストラスブール市の方が圧倒的に多い)【写真上・ストラスブールス現市長リス氏】
- ストラスブールで具体的に自転車推進が成功した要素は3つあります。
① 自転車交通の安全の保証・専用道路の整備は当然で、クルマの走行速度制限、十字路における自転車行路の確保など道路の再構築への投資が必要。道路空間の再配分に歩行者と自転車専用スペースを最初からカウントする。安全でないと両親が子供に自転車を使わせたがらない。
② 駐輪対策の充実化・フランスでは盗難が多い。誰だって2回続けて盗まれたら自転車はあきらめてしまう。ストラスブールでは新規マンション建築には最初から自転車置き場を設けることを建築許可を与える際の条件にしたり、企業対象に自転車パーキング場所設定を推進するモビリティーマネジメントを行っている。(ちなみに、日本の地方都市でレンタル自転車150台のうち140台が帰ってこなかった、と話題になったが、フランスのワンウエイレンタルシステムでは、クレジットカードのデポジットが義務付けられているので、利用者は当然返還する。勿論盗難はあるが)
③ 最後は文化的戦い【市長はBataille=Battleという単語を使った】1960から70年代のモータリゼーション華やかな頃、自転車は貧乏人の乗り物だとみなされていて、その社会的な固定観念から脱出できていない人口層が残っている。
- 日本の自転車政策に詳しい方によると、『日本の市長さんは『自転車に関して』こんな細かいことまで発言しない(できない?)』そうだ。ストラスブールは世界規模でみても自転車整備率及び利用率が第4位という自転車都市で、市長によるとここまでこれたのは行政の政策の一貫性に尽きると。【 cabinet danois Copenhagenize によると、1位、コペンハーゲン、2位アムステルダム、3位ユトレヒト、4位ストラスブール、7位ナント、8位ボルドー、17位パリ。】1位のコペンハーゲン市内の自転車がモビリティーに占める率は何と45%・・・
【市長たちの講演ステージ上での演奏もあったフランス海軍の音楽隊。ナントや近接するサン・ナザールはフランスを代表する造船産業地帯】
リス市長は、自転車を進めるのは『罰するのではなくてあくまでもプロモートすること』『参加へのガバナンス』の工夫が大切だと力説。
『ロビー活動をする人たちに答えるために、モビリティー手段の足し算で、ただ『格好いい』からだけで自転車を持ち出しても長続きしない。長期的展望を持ち、時間がたっても整合性を失わない自転車政策を行政がきっちりと打ち出す。その為には、現在の自転車利用状況をまず分析して、どうすれば現状に適応した推進策が取れるか、何処を改善すれば自転車利用者が増えるかを考えてゆき、また自治体警察とも協力する必要がある。ストラスブール市長として、中心街からはクルマと駐車場を減らし、また駐車料金もまちの中心では高いように設定した。こういった一連の一貫性のある政策を遂行するのに必要なのは、次の選挙をかけた我々政治家の勇気です。』
シンポジウムでは多くの政治家や学者の発表があったが、経験に基づいて自分の言葉で語ったリス市長のコメントのあとには大きな拍手が会場から送られた。【続く】
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