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パリのLRT延伸線(2012年12月)沿いのアートとコスト

11 04 2013 | Actualités ブログ記事, France こんにちのフランス, LRT, Paris パリ, Tramway-路面電車

パリで、昨年12月15日に開通したLRTの新線T3bに乗ってきた。すでに開通していたパリ西部から南部までの環状道路に敷設されたT3aに続き、東の « バンセンヌの森 »から北部の « Porte de la Chapelle »までをつなぐ沿線。各駅にアート作品が配置してあり、とても楽しい。元来この沿線には、『蚤の市』で有名なクリニャンクール駅などで賑わうが、どちらかといえば治安状態が余り良くない区域が多かった。そこに明るい駅を作り、乗客の顔が見える窓の大きい明るいLRTが走り、各駅付近の緑化が進み また駅自体もお洒落なデザインであることから、急速に周辺の雰囲気が変わりつつある。透明なガラス・木をふんだんに使ったベンチなどで清涼感とエコ感覚が強調され、勿論各駅にはパリの乗り捨て可能レンタルサイクル・ベリヴも配置。

中でもサイエンスパークがある « Porte de Villetteポルト・デュ・ヴイレット駅 »は秀一。フランス人のアーティスト・アニタ・モリネロ(Anita Molinero)は、プラットフォームが地面に垂直に延びているような錯覚を起こさせる駅のデザインを行った。最初は私も良く分からなかった。足跡やタイヤの跡が、雪を思わせる白いコンクリートの上に垂直に上っており、外灯はクルマの赤い後方ライトを適応。

駅として機能しているのは勿論だが、そこに「あれ?」と思わせる意外性を織り込み、日常性の中にデザインとアートを導入した。

ストラスブール市で1990年代にトラム各電停をインスタレーションアート(野外に設置する造形アート作品)に開放した時の目標の一つは、一人よがりな芸術の世界に閉じもりがちなアーティストに、社会性を持たせた作品制作を依頼し、より多くの人に鑑賞してもらうことでもあった。それから20年。ストラスブールでは当事の作品は街の一部として溶け込んできた。元来、街中にアートが存在するようなパリだが、『電停にもアート』の試みがこのT3b線の各駅で行われている。

「とにかく、徹底的にクルマが不便なような交通政策にしなければ、市民はマイカーを手放さない」というセオリーのもとに、パリへのLRT導入は、クルマに対する正面をきっての戦争の結果ともいえる。この10年でクルマのパリ市内通行量は24%減少した。バス専用路線、トラム、自転車専用道路、グリーンスペースなどの敷設を並行して進めてきた。現在パリ市内のクルマの平均走行速度は16Km.2001年に179000台分あった駐車場は2008年には154100台にまで削減。2001年には無料駐車スペースが32000台分あったが、現在では僅か3000台。それに対して地下駐車場スペースは増えていない。駐車違反の取締りも、かつてのパリと違って現在は厳しく、しかも2010年の8月から何と罰金が54%もアップされ、17ユーロ。とうとう、パリジャンもクルマを手放し始めた。2001年には約半分のパリ所帯がクルマを保有していたが、2010年度には41%にまで下がった。

しかし、コストもすごい。今フランスでは25の都市でLRTが走っているが、パリのLRTの1Kmあたりコストは61億円。〔フランスでは普通25億円台が平均とされている〕ちなみに、14.5Kmのこの延伸工事には約8億8500万ユーロかかっているが、このうち前述のアート群設置〔各駅に様々な作品がある〕にかけた予算は僅か1100万ユーロ。トラム導入そのものが中々進まない日本で、電停のアートが話題になるのはいつ頃になるだろうか・・・

(文中数字の典拠・ルモンド誌・チャレンジ誌)

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