- ストラスブール市中心部から自転車で30分足らずでライン河。川を越えるとドイツで、その対岸のケール市まで2.9KmのLRT延伸工事の合意形成がこの夏終わった。国境を越えるプロジェクトにどのように合意形成の面で対応しているのだろうか?
- 実は対岸のケール市までのLRT延伸は、20年前に初めてストラスブール市にLRTを敷設した当時のトロットマン市長の悲願でもあった。ストラスブールで 路面電車の最後の路線がはがされたのは1966年だが、実は戦前には、ケール市までもライン河を超えて路面電車が走っていた。(写真下参照)。写真でも分 かるように、このライン河とその支流で囲まれた区域は、かつては河川交通の倉庫地帯として栄えていたが、クルマ輸送にシフト化されたため、5年くらい前ま では一種の産業不毛地のような呈であった(現在はかつての産業遺産物をマルチメディアセンターや古文書図書館などに再利用して、再開発が進む)。
この地帯全体を再整備して、対岸のケール市(人口15000人)の鉄道駅までまずLRTを延伸して、将来はケール市の中心広場にある市庁舎まで伸ばす予定だ。国境となるライン河の中心線からはドイツ側の費用負担となる。現在、ストラスブール市にとってはこのドイツ側に延伸する交通手段の提供が「ヨーロッパ中心都市としての存在感を高めるというシンボル的な意味」を持ち、また実際一日に30000人近くがケール市からストラスブール市に通勤している(ケール市の方が家賃が安いために、ドイツ側に居住するフランス人が多い)
(写真下)左の川はライン河の支流・右の川が、独仏国境となるライン河本流・この延伸工事では LRT通過用に新たに橋梁を2本建設することになる。
(写真下・ライン河支流側の橋梁プロジェクト・上設計図の左側、フランス側の支流地帯にあたる)
このプロジェクトは、「国境を越える」ということと、「人口が少ない処に公共交通を引く」という2点で斬新な企画である。利用客はすぐには多くは見込めない。「わざわざ人口が少ない地区を通る地区に交通を引いてから沿線の住宅開発か」、「それともすでに住宅が多い地区に交通を通すか?」つまり、「交通が先が、住宅が先か?」という議論はCUS内でもあったと聴いている。これはかつて日本の鉄道会社を沿線に住宅開発を行ったことを思い浮かばせる。結果的には、まず鉄道を引くことから始めるわけだ。
- フランス側の合意形成のカレンダー
- 2009年6から7月と2010年10月から11月・ 事前協議
- 2012年・ ケール市との協約プロトコール調印
- 2013年5月27日から7月5日・ 公的審査 ( 公的審査では、事前協議の結果を受けて、市役所側が提案した国道近くの路線から、より北側の不毛地に路線を変更した。これは、将来の副都心としての開発のスペースがより広く取れるという理由による。)
- 2013年末?・議会での承認
- 2013年末?・県知事による公益宣言発令(事業許認可)
- ケール市があるドイツには法律で、フランスのように『事前協議+公的審査』というプロセスが法律で制定されていないので、ストラスブール側のスケジュールに比較的柔軟に合わせて、やはり合意形成のスケジュールをたてている。
- 2013年6月17日から7月17日・パブリックインボルブメントを中心とした事前協議
- 2013年11月・ ケール市議会による承認
(写真上・LRT延伸を見越して、ライン河国境付近ではマンション建設工事が始まっている。)
左の写真にあるこの道路の途中でポツンと途切れた芝生軌道の先が、ライン河へと伸びる線路になる。
- 私はこの付近がまだ『不毛地帯』であった頃を知っているが、現在では付近の道路整備がすでに終わっており、その見違える様相には驚くばかりだ。LRT路線を通す前に、自動車やバスの迂回道路をきっちりと用意するのも大切だ。
- さて、多分下のデッサンのような素敵な電停になるであろう・・開通が予定されている2年後が楽しみだ。
(写真下・そして今、同じ場所で。写真の左端に上の設計図右に位置する同じ教会の建物が見える。)
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