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地中海都市モンペリエのLRTは無料化に

23 08 2023 | Actualités ブログ記事, LRT, Montpellier モンペリエ, Tramway-路面電車

・モンペリエ市の人口は約30万人だが、都市域内交通は周辺の31の小さなコミューン(フランスの行政最小単位)と構成する人口約50万の広域自治体連合メトロポールが政策主体となっている。だから人口規模では宇都宮市とほぼ同じである。

モンペリエ駅から出ると、いきなり目の前にこのような景観が広がる。超派手なモンペリエのLRTには4つのデザインが、路線ごとに分けてあり、大変分かりやすい。

・モンペリエ市のLRT開業が2000年で、他の同じような人口規模の大都市から比べるとやや遅れるが、現在では総線路距離が約60Km, 電停数が84と、フランスではボルドー、ストラスブール、ナントと並ぶLRT大都市である。

夜も美しいデザイン。モンペリエ駅前の景観を上の写真と反対側から。

・さて、たとえばメトロポール・ストラスブールでは18歳以下の公共交通運賃は無料化、メトロポール・ナントでは土、日曜日はすべての市民対象に公共交通が無料化されている。いずれも環境対策が目的で、市内への移動は車利用抑制効果を狙っている。モンペリエ市では2024年1月から、すべての公共交通運賃をすべての住民に無料化する(現在は18歳以下+65歳以上は運賃が無料、19歳から64歳は週末のみ無料。メトロポール・モンペリエの住民の約40%がすでに無料化の恩恵を受けている)。全市民を対象とした無料運賃適用は、人口20万人以上の自治体ではフランス初である。

写真は平日の午後に撮ったもの。とにかくLRTも人も多い。LRTが数珠つなぎに走行する。線路上に進入している車は、運行オペレーター会社の業務車や市役所等の車。場所によってはタクシーの進入も許可されている。

・この無料化はMaaSやデジタルカードの発展とも結びついている。公共交通利用の無料化は、住民であることが条件なので、モビリティカードが無料化を享受できる条件の提示カードとしても稼働する。住民があらゆる公共交通を組み合わせて移動しやすいように、自治体が開発しているMaaSにはLRTやバス運行状況、公営のシェアサイクル、駐車場の空き情報なども搭載している。

古い歴史を持つ旧市街を囲むように走るLRT。明るい色合いが不思議と歴史遺産建築物とマッチしている。

なぜ運賃無料化に踏み切るのか?交通の無料化は、街の魅力を高め、良い人材確保につながり企業の経済活性化につながるという考えである。つまり、移動しやすい都市は人を引き付ける。また、交通を健康・医療・教育と同等に扱い、交通費用の家計負担の軽減。そして勿論車利用抑制による、大気質改善の改善を期しており、環境対策の好事例(エコロジー移行)のモデルとなるとモンペリエ市は考えている。EUではすでにルクセンブルグなどが国中の公共交通を無料化している。

なぜ無料化に踏み切れるのか?2022年は運賃収入が約4千万ユーロで、ランニングコストの約40%にあたる。モビリティ税の収入が、公共交通の政策主体であるメトロポール(広域自治体連合)に、1億1000万ユーロある。実はこの収入で公共交通のランニングコスト全体(運行会社の従業員の給料も含めて)が、モンペリエでは賄えるそうだ!(ちなみに、フランス全体の平均ではモビリティ税は、ランニングコストの30から40%にあたる)

現在LRTの第5路線を工事中。そのため現行路線がこのように突然止まる。緑の安全ベストを着た女性は顧客サービス係で、工事現場を通り超えた所から、LRTが運行していることを説明。(つまりそこまで歩いてください、ということ!)驚いたのは、荷物を持った文句を言う女性の荷物を代わりに持って、案内係が次の電停まで客と一緒に歩いていったこと。

工事現場を回る時、どんな工事を行っているのか、分かりやすい説明をしている。27の新しい電停(確かに一般の人は線路の距離よりは、電停数の方が規模感を把握しやすいだろう)。6分間に1台のLRT.モンペリエ駅の北から西まで45分。

仮設の工事中断駅からLRTに乗り入れる人たち。

南のLRT終点からはバスが、地中海まで走っている。LRTと同じ切符で乗車できる。

そしてバス最終駅を降りると地面は砂地。目の前には地中海。バスは15分間隔で運行している。

ちなみに、メトロポール・モンペリエはマルセイユやストラスブールと同じく、民間の運行オペレーターに運行業務を委託せず、自治体の自前会社(SPLと呼ばれる公営会社)が行っている。従業員数1200名! 理事会メンバーと資本は公営だが、一般の従業員は地方公務員ではない。

4つ目のデザインの車両。車両へのタグを防ぐという目的もあるが、利用者にとっては路線ごとにデザインがはっきりと異なるので分かりやすい。運行側にとってはダイヤの組み方に工夫がいるとのこと。

そして最後は2023年1月に発表された、将来の第5路線を走る車両のデザイン。「生命の葉」(Feuille de vie)と名付けられたデザインで、環境保全を強く意識している。(Image@Montpellier Mediterannée Métropole)

 

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