・モンペリエ市の人口は約30万人だが、都市域内交通は周辺の31の小さなコミューン(フランスの行政最小単位)と構成する人口約50万の広域自治体連合メトロポールが政策主体となっている。だから人口規模では宇都宮市とほぼ同じである。
・モンペリエ市のLRT開業が2000年で、他の同じような人口規模の大都市から比べるとやや遅れるが、現在では総線路距離が約60Km, 電停数が84と、フランスではボルドー、ストラスブール、ナントと並ぶLRT大都市である。
・さて、たとえばメトロポール・ストラスブールでは18歳以下の公共交通運賃は無料化、メトロポール・ナントでは土、日曜日はすべての市民対象に公共交通が無料化されている。いずれも環境対策が目的で、市内への移動は車利用抑制効果を狙っている。モンペリエ市では2024年1月から、すべての公共交通運賃をすべての住民に無料化する(現在は18歳以下+65歳以上は運賃が無料、19歳から64歳は週末のみ無料。メトロポール・モンペリエの住民の約40%がすでに無料化の恩恵を受けている)。全市民を対象とした無料運賃適用は、人口20万人以上の自治体ではフランス初である。
・この無料化はMaaSやデジタルカードの発展とも結びついている。公共交通利用の無料化は、住民であることが条件なので、モビリティカードが無料化を享受できる条件の提示カードとしても稼働する。住民があらゆる公共交通を組み合わせて移動しやすいように、自治体が開発しているMaaSにはLRTやバス運行状況、公営のシェアサイクル、駐車場の空き情報なども搭載している。
・なぜ運賃無料化に踏み切るのか?交通の無料化は、街の魅力を高め、良い人材確保につながり企業の経済活性化につながるという考えである。つまり、移動しやすい都市は人を引き付ける。また、交通を健康・医療・教育と同等に扱い、交通費用の家計負担の軽減。そして勿論車利用抑制による、大気質改善の改善を期しており、環境対策の好事例(エコロジー移行)のモデルとなるとモンペリエ市は考えている。EUではすでにルクセンブルグなどが国中の公共交通を無料化している。
・なぜ無料化に踏み切れるのか?2022年は運賃収入が約4千万ユーロで、ランニングコストの約40%にあたる。モビリティ税の収入が、公共交通の政策主体であるメトロポール(広域自治体連合)に、1億1000万ユーロある。実はこの収入で公共交通のランニングコスト全体(運行会社の従業員の給料も含めて)が、モンペリエでは賄えるそうだ!(ちなみに、フランス全体の平均ではモビリティ税は、ランニングコストの30から40%にあたる)
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