- ラロシェル市で無人運転電気ミニバス社会実験開始
- フランスの大西洋岸にあるラロシェル市は、人口約75000人の元は漁港として栄えた地方都市で、現在は夏になると近辺の離れ島にバカンスに訪れる観光客で溢れ、フランス人にとってはリゾートのイメージが強いが、日本では「カーフリーデー」発祥の地として有名だ。1997年9月に、世界発となる「カーフリーデー」を実施し、2014年も9月22日に行われた。現在では、「モビリティーウイーク」と称して、EUのみならず世界各国で実施されるイベントである。日本でも望月真一先生が代表である 「一般社団法人カーフリーデージャパン」が様々な情報を発信しているので、ご興味のある方はhttp://www.cfdjapan.org/ を是非ご欄になってください。
- ラロシェル市では、ミッシェル・クレポー氏が1971年から1999年の没年まで市長を勤めた。元弁護士だが、環境、交通分野で時代に先んじた事業を同市で展開してきた。まだ世の中が「開発」一色だった時代の1973年に、海岸線を守るために海辺での一切の建築を禁じ、フランスで発の歩行者専用道路を設けた。 1975年からはレンタルサイクルを400台整備【パリのベリヴに先んじること、30年!】、1993年からは電気自動車導入と常に斬新なモビリティー手段の導入に熱心だった。 ミッシェル・クレポー氏は1981年から2年間フランス政府の環境大臣も兼任したことがあり、1982年に制定された通称LOTI 【フランス国内交通基本法】の成立にも関与している。 (このあたりは、ストラスブール市のまちづくりで成果をあげたトロットマン氏が、1997年から2年間やはり中央政府で文化大臣に就任したことを思わせる)
- 市長交代後の2000年にはElcidisと名付けられた電気自動車の利用と都心の物流分配プラットフォームを利用した物流システムも開始した(PROXIWAYという企業がシステムとサービスを供給している・フランスでLRTなどの都市交通運送軌道事業体の一つTransdevの支社)が。 そして、この12月17日からフランスで初めて無人運転電気ミニバスの社会実験を始めた。
長さ5m幅1.5m、8人乗りのミニバスは運転手なしで、15から20Kmの速度で、まず市の観光案内オフィス付近から水族館までの1Km足らずの距離の社会実験に乗り出した。一般市民が無料で利用できる。システム上は車体付近の障害物を回避できるように構築されているが、フランスの報道では早くも衝突事故があった場合の保険のあり方などが言及されており、ラロシェル市でも社会実験の間、運転手はいなくても「緊急事故の際にブレーキを発動できる端末機を持った係員」が同乗することになっている。
この電気バスは月曜日から土曜日の11時30分から17時まで運行され、毎日午後の2時間、CITYMOBIL2と命名されたこの乗り物の社会実験を説明する、インフォメーションセンターもオープンする。広報をきっちりと行うところ、しかし店舗などが閉店する日曜日は運行しないことなどフランス的ではある。 現在は3台だが、2015年の4月までには徐々に6台に、走行距離も大学がある1.6Kmまで延長する予定だ。
CityMobil2 プロジェクトは 「都市環境における自動運転交通手段の利用促進のための研究及び実証」を意図するEUプロジェクトの一貫で、2012年から2016年8月までが対象。 すでに過去には CityMobil1 プロジェクトにおいて、まず自動運転の交通手段に対する理解を得るためのデモ運転を行っていた。ローマ大学も協力しており、地元のラロシェルにある工科大学や前述のProxiway社、ラロシェル市役所などを含み、欧州の45の機関がパートナーとなっている。
写真上・http://www.agglo-larochelle.fr/ HPより
- さて、このニュースでは最後に今年の10月からグルノーブル市で始まった、カーシェアリングにおけるラストマイルズの解決手段の一つとして 「超小型電気自動車を利用する社会実験」 の様子も紹介された。トヨタは70台のEV(i-Road と Comsが35台ずつ)を供給したが、近未来的なデザインの超小型車が、グルノーブル市内を走る映像はかなり強烈な印象を視聴者に残したと思う。
- 以下、トヨタとグルノーブル市との共同発表からそのまま引用する【引用部分は赤字】
- グルノーブル市、グルノーブル都市圏共同体(以下、メトロ)、シテ・リブ社、フランス電力公社(以下、EDF)、ソデトレル社(EDF の完全子会社)、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、10 月1日より、公共交通機関と連携した新しいカーシェアリングサービス“Cité lib by Ha:mo”を開始する。このサービスでは、渋滞や大気汚染などの都市交通における課題に対応するために、公共交通機関を補完する近距離移動を超小型電気自動車(EV)が担う。各パートナーが専門技術、電力インフラ、IT インフラを持ち寄り、3年間の実証実験として行われ、トヨタは、運用に必要なシェアリングシステムと、超小型EV であるTOYOTA i-ROAD とトヨタ車体(株)製のCOMS をそれぞれ35 台提供する。
- 「本サービスでは、近距離でのワンウェイ利用(乗り捨て)が可能。利用者はあるステーションで車両を借り、別のステーションに返却して、使用時間分の料金を支払うこととなる。料金は初乗り15 分まで3ユーロ、次の15 分は更に2ユーロ課金、それ以降は15 分毎に1ユーロずつ課金されていく。なお、同地域における公共交通機関の定期券所有者には割引が適用される(初乗り15 分が2ユーロ、それ以降15 分毎に1ユーロずつ課金)。また、メトロの経路検索システム(Station Mobile)とも連携することで、本サービスを含む、様々な移動手段を組み合わせた最適な経路が探索できるようになる。
- グルノーブル市のジャック・ウィアール副市長は「グルノーブル市には、イノベーションに積極的に取り組んでいくことで、市民の生活をさらに良くしていくという伝統がある。本プロジェクトはまさにこの伝統に沿った取り組みである」と述べた。また(同都市圏内の)在住者の一部が自家用車の利用からカーシェアリングに移行した場合、CO2 排出量の削減につながり得る。メトロのクリストフ・フェラーリ理事長は「本サービスは始まりに過ぎず、持続可能なモビリティに全方位で取り組んでいく」と述べた。
- 実際にはカーシェアリングは高速道路なども走行するので、普通の乗用車が利用される。しかし、カーシェアリングで出勤したとしても、それぞれが自家用車を駐車した拠点から自宅までの「Last Miles」のマイカーにおける移動が残る。この最後に残った短距離移動にワンウエイ移動手段を利用できるわけだ。それにしても、ラロシェル市といい、グルノーブル市といい、人口規模の小さな地方都市の行政が主体となって、海外の研究機関や民間企業と提携して、次々とあたらいいモビリティー改革に乗り出していることが興味深い。
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