2)イタリア全土での封鎖解除
4月26日のテレビ実況放送でイタリアのコンテ首相が、ほぼ60日間続いた都市封鎖の解除に関する新しい政令を準備していることを発表した。
医療崩壊を避けながら、これからはコロナウイルスと共存してゆく第二段階に入ったと数字を挙げて解説した。「経済活動を一刻も早く再開する必要性と、国民の健康を守るという二つの課題に対応するために、都市封鎖は段階的に解除してゆくが、国民は必ずマスクの着用と最低1mの間隔を守ることで、復興に協力しなければならない」と丁寧に説明した。5月4日から薬局で販売される外科用マスクは、一つ50サンチームと価格も設定された。「イタリアを愛するなら、人との間隔を守って」と何度も繰り返した。
5月4日から公共工事や工場などでの事業再開、農作業が認められ、公園にもアクセス可能になる。5月18日からは、一般店舗、美術間、図書館などもオープン。6月1日からは、感染確立が高いとされる、美容院、理髪店、マッサージ等のビューティサロン、そして、バーとレストランの営業も許可される予定だ。しかし、どの店舗も顧客達の間の距離を最低1メートル、来店時のアルコール消毒、マスク着用などの条件をクリアしなければならない。(レストランではテーブルとテーブルの間に、透明なプラスチック衝立を設置することが真剣に考慮されている。)そして、すべての学校は9月の新学期まで休校である(イタリアの学校は5月20日で学年度が終了なので、リスクを回避。夏休みが通常でも3か月ある)
そこに各地方が追加の特別条件を付け加えることも予定されているので、封鎖解除条件の複雑さに対して、ネットでは早速「私のお話したことが分かった人だけ、外出してもいいですからね」という揶揄的な首相の写真も出回っている。
移動に関しては、居住する自治体から出ることは可能になるが、地方間移動(日本の県外への移動にあたる)にはそれを正当化する必要がある(就労、治療など)。学校が休校であることから、職場にはすべての人は戻らないし、テレワーキングが可能な職種には、在宅勤務が推奨されている。
イタリア全体で26000人の死者が出てしまったが、そのうち約半数がミラノを中心とするロンバルディア地方だ。都市封鎖解除とともに公共交通をどのように運営してゆくかは、大きな課題の一つだ。公共交通の運行は経済活動再開の重要な前提条件であるため、いかに乗組員と乗客の安全を守りながら、公共交通のサービス回復させるか、そのために財政支出を惜しまない姿勢だ。都市内交通は採算事業ではなく公共サービスだと位置づけられているため、日本のように「運賃収入が激変したので、公共交通は壊滅」にはならない。
今までミラノではすべての公共交通に、一日あたり200万トリップがあった。Social Distanceを守ると5月4日以降はまず、50万トリップくらいまで輸送能力が落ちる。つまり、今までの公共交通利用者のうち4人に1人しか利用できない。地下鉄を利用していた140万トリップのうちの100万トリップは、そのほかの方法に振り分けなければならない。自動車、通勤用貸し切りバス(企業がチャーターする)、タクシー、二輪車、自転車、徒歩・・・。
しかし、都市内交通は公益事業で、その許認可・運営は都市の裁量に任されているので(財源も)、国家レベルでの規制は最小限とで、各都市は自らの判断で新しいモビリティ施策を導入できる。だから4月22日の記事「ミラノの公共交通」で紹介したように、ミラノ市での35Kmの自転車専用道路導入などの決定、実施も比較的短時間で可能だ。35Kmのうち23Kmはこの夏までに、残りも冬には完成の予定だ。実際にどのような展開になるか楽しみに見守って行きたい。
シアターやフェスティバル、コンサート、イベントはこの夏は禁止のままのようだ。家族に会うための移動(同じ州内。距離の上限示唆無し)は許可されるが、友人に会いに行くのは5月18日まで待つ必要がある。今まで通り、すべての移動には、移動の理由を明記する自己申請書の付随が必要。今まで禁止されていたお葬式は、15人までの集まりなら許可されるが、すべての集会は教会での集まりも含めてまだ許可されない。イタリアのカトリック司教協議会が「信仰の自由の侵害」を理由に、早速、政府の発表に反対するコミュニケを発表した。民主主義を守ることはかくも難しい・・・
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