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ミラノから・イタリア首相令による移動制限地域の拡大

09 03 2020 | Actualités ブログ記事, Italia イタリアの都市

(7日土曜日の大運河通りの景観。「マスクはすでに咳をする者が他者への感染を防ぐために着用」との認識が広がっているため、ほとんどの人がマスクをしていない。マスクを医療関係者に優先的に提供することも、市民の理解を得ている)

  • 日本でも大きく報道されたようだが、3月7日(土)の夜遅くに、イタリア政府は新たな首相令を発表し、ロンバルディア州と14の県を対象として,新型コロナウイルス感染拡大阻止の新たな対策として、移動制限を設けた。【この発令書は13頁にもわたり、各メディアで全文が紹介されている。正式発令の前に、首相令の9頁のドラフトがメディアに流れ、急いで自宅に帰るのであろう旅行者や出張者が、ミラノ駅に押し寄せた。】
  • 「封鎖」と報道しているマスコミもあるが、正確には「封鎖」ではなくて、「移動制限」である。緊急の際や健康上の理由などでの移動は認めており、コンテ首相は「移動を完全に禁止する措置ではない」と説明している。今のところ、ミラノの2つの空港も閉鎖はされておらず、筆者もエアーフランスから、7日午後に「フランスからイタリアへのフライトを30%減少するが北部も含めて運行は維持する」とのメイルを受け取っている(ちなみにエアーフランスは中国へのフライトは1月30日以来、全便休航)。
  • 対象となる地域は、ミラノやベネチアを含む14県で人口は約1600万人。移動制限地域では、映画館、体育館、プール、美術館、スキー場、ナイトクラブなどは閉鎖。(実は、教会や美術館などは2月26日から一週間の閉鎖後、3月1日からは開館していた)レストランやカフェは午前6時から午後6時まで営業できるが、利用者は少なくともお互い1メートル離れて座らなくてはならない。結婚式や葬式、スポーツイベントも、開くことができない。
  • 住民はできる限り家に留まり、不要不急の外出を控えるよう求められている。発令が出た8日の日曜日の午前、街中では確かに車の姿はほとんど見られないが、住民たちはカフェを飲んだり、お花を買ったり、犬の散歩と、いつも通りの風景が広がっていた。日中の温度がすでに16度の最近はすっかり春の気配で、満開の桜、梅、マグノリアの花々が美しい。


大型スーパーは8日からなぜか土曜日、日曜日は閉店になるが、平日は通常営業。そのせいか、近所のスーパーを見ても買いだめやパニックはゼロ。なぜ、メディアはスーパーの棚が空になった映像を映すのか・・・反面、レストランは午前9時から午後6時まで営業可能だが、これから午後6時以降は一切、バーやレストランの営業が無くなるので、夜の街の雰囲気はかなり変わるだろう。

  • イタリアでは8日時点で、確認されている死者数が中国・湖北省に次いで多い計366人に達し、確認された感染者数も1日で1200人以上増え、7375人になった。民主党の党首やロンバルディ地方議会の議長も感染をそれぞれ公表している。死亡者の大半が80才以上のすでに持病がある高齢者が中心とはいえ、感染者が1000人に迫るフランスで死亡者が19人と比べると、比率的にイタリアで死亡率が高いことは、欧州でもいろいろと研究がなされているようだ。

(3月7日の公園景観・「閉鎖空間ではなく戸外が安全」という厚生省のメッセージがあるので、好天気と相まって、どこの公園も人が多い。)

  • しかし、具体的には、たとえば営業するレストランでは「利用者は少なくともお互い1メートル離れて座れる」条件厳守や、不要の外出は控えるなどを、1600万人もの市民に対して強要も監視もできない。だから大統領は「これは一人一人の市民が責任感がを持って、実行してほしい」とテレビで訴えている。
  • 医療体制の充実や、困窮する世帯に対する緊急補助策として政府は75億ユーロの予算を認めた。これはトランプ大統領がサインしたコロナ対策予算83億ドルと比べても、イタリアとしては大きな額だ。そのために財政支出赤字が折角過去に、少しずつ改善されてきていたが、この特別会計で2.2%から2.5%に逆戻りしてしまうが、EUへの手回しはすでになされている。
  • GDPの13%が観光業で支えられているイタリアで、この移動制限対策が、今後具体的のどのような数字で、観光業だけでなく、すべての産業に大きなダメージをもたらすのか、大きな未知数だ。イタリアのネットでは「連帯意識を持って、お互いに楽しく家庭での時間を過ごそう」というメッセージや、そのためのアイデアをシェアするために情報サイトが早くも多く立ち上がっていることが明るいニュースだ。「デジタル連帯」というサイトでは、リモートワークに必要なプラットフォームやデジタルサービスを紹介している。「職場でまだ電話とファックスを使っている」、と日本の職場体験で驚いたイギリス人の若い女性が日本で話題になったが、確かに、イタリアでも仕事はほとんどメイルで、テレビ会議も日常化している。だから家庭で仕事をしてもその期間が長引かなければ、大きな影響も出ない職種では、粛々とリモート・テレワーク(イタリアではこれをスマートワーキングと名付けている)を行っているのが現状だ。

  • (ほとんど車の走行がない、日曜日のミラノのメイン通り。路面電話は平常通り運行している。日曜日にはすべてが閉店するフランスから来た筆者にとっては、日曜のガランとした街の景観には見覚え感があるが、ミラノ市民にとっては大きなショックだと報道されている)

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