Riminiの「Velocity」自転車都市世界会議(2)

28 06 2026 | Actualités ブログ記事, Bicycle 自転車, Italia イタリアの都市, Urban Planning まちづくり

リミニ

・開催地のリミニからは、市役所の交通部長Michelacci 氏が、かつては中心市街地には車が溢れ、街の中にあるローマ時代からの歴史的建造物周辺でさえ駐車場と化していたが、少しずつ車走行を減少させ、海辺を中心に都市空間再編成を行ってきた経由の説明を行った。

かなり以前から、都心(この写真はトレ・マルティーリ広場)における歩行者空間化を始めていたことが分かる。ビーチから3Kmしか離れておらず、現在はレストランやカフェなども並び、活気がある

・街いちの観光スポットであるティベリウス橋は車両通行止めにして(現在工事中)、橋の下の運河は素晴らしい水上広場となり、我々のBike Paradeでは平日の夜8時くらいにこの場所を通過したが、水際ではヨガの教室が大々的に開かれていた。

工事中でラッピングされたローマ時代(起元21年くらいに完成)遺跡のティベリウス橋。しかし、橋は歩行者と自転車は利用することが出来た(写真・Velocity提供)

本当に気持ち良さそうにヨガを楽しむ人たち。仕事が終わったあとに、このような空間でリラックスできる生活環境は快適だろう

・リミニはイタリア代表するビーチ都市として、バカンス客が車で海辺までアクセスしていたので、海側観光エリアと内陸の住宅地(閑静なイタリアらしい個人住宅が多い街路が多かった)が分断されていて、徒歩や自転車で往来できなかった。そこで、海岸線16kmの完全な歩行者空間化、200Kmに及ぶ(リミニ郊外も含む)自転車交通網を構築して、内陸部から海まで、安全に自転車(徒歩でも)で移動できるようにした。国道や線路をまたぐエリアには陸橋や地下道が整備され、我々も海側のホテルから内陸のVelocity会場まで、毎日緑の中を快適に自転車で移動した。

中央の赤いエリアが旧市街地(地図・Rimini Tourismo)

海岸通り。海・ビーチ・海岸線プロムナード(徒歩と自転車)・1車線・歩行者専用道路・ホテルやレストランなどの建造物群・内陸側道路という構造(写真・Velocity提供)

海岸線整備前と後。整備された海岸線16Kmのうち、リミニ中央駅北のビーチから3㎞には、植栽空間とウッドデッキを設けた。ちなみにシェアバイクで間違って歩行者専用のウッドデッキに上がると、自動的に時速が12Kmくらいにまで下がる

幅広い砂浜にビーチチェアを並べるイタリアスタイルのリゾート地(フランスでは余り見られない)。ビーチは数十メートルごとに区切られ、それぞれの区画は面するホテルのプライベートビーチだが、入場料を払えばだれ誰でもプライベートビーチに入ることができる。15㎞にわたるこの海浜エリアは、余りにもバカンスのDestinationとしての成功が大きかった故に、海辺の車渋滞とすべての空間が駐車場化してしまっていたことが大きな問題となっていた(写真は早朝に撮ったので、人影は見当たらない)

暑くなる前の午前には、ゆっくりと海辺を歩く人たちの姿も見られる。泳いでいる人は稀だ

歩行者空間と自転車専用道路を整備しただけではなく、植栽を整えて海岸線に景観を取り入れ、スポーツエリアや児童の遊戯エリアを創出するなど、総合的な再編成を行った

見ていて楽しいビーチバレー。このような空間が一定間隔でビーチに整備され、特に涼しくなる夕方以降の利用度は高いように見えた

・また海岸線整備の結果、内陸側道路には車が入りにくくなることを見越して、2019年からトロリー連接バスであるMetromare(海辺のメトロ)を導入し、15分から30分間隔で走行している(ホテルのすぐ前の道路を走っていたのに、残念ながらこちらには乗る機会には恵まれず)。

Metromare.の車両。リミニから11㎞南にあるリゾート地Riccioniまで専用軌道を走るバス。25年間に及んだこの事業計画には建設費の高騰、工事長期化、バス導入の遅延などを巡って、地元で大きな政争になったそうだ

海辺を離れると、中心市街地では閑静な住宅街が続き、必ず自転車専用道路が整備されている

閉会式で壇上に上がった、Velocity開催に尽力したリミニ市役所やNPOのスタッフたち。演説台にはイタリア国旗の紋章をつけたリミニ市都市計画担当の副市長(市長が議員の中から副市長を選ぶ)。フランスもイタリアも行政職員の60%は女性である

・環境保全の観点から中心市街地における道路空間再配分を進める都市は、*C40加盟都市に多く、たとえばシドニーなどはデータを駆使して車走行を削減した道路再編成を行い、自転車専用レーンを整備した経由を発表していた。総じて、どの自治体も「なかなか大変だった」との一言につきる本音が発表者の発言に見られたが、少なくともVelocityに参加した者たちの共通概念は、「みんなで楽しむ都市空間」である。*【都市気候リーダーシップグループ(C40 Cities Climate Leadership Group)は、気候変動への取り組みを行う都市ネットワーク。日本では東京と横浜市がメンバー】

ミラノ

・「みんなで楽しむ都市空間」という観点から、Velocityでは車の駐車問題も分科会で取り上げられた。駐車場から公共空間への転用に際して、行政が行う合意形成の分科会が多かったが、行政主導ではなくミラノのNPOの活動発表が興味深かった。ミラノの不正駐車はパリやバルセロナの3倍近くになるそうだ。NPO会員がミラノ市内の不正駐車データをまとめて、市当局に働きかけた。こういう具体的な調査を実行し、政策助言の根拠とする活動は素晴らしいと思った。NPOの名前は「Sai che Puoi? 私たちに何ができるか知ってる?」である。以下のレポートに詳細な活動報告を読むことができる。https://www.saichepuoi.it/wp-content/uploads/2024/09/report-vialibera.pdf

ミラノでは不正駐車が占拠する都市空間は大聖堂がある大広場面積の32倍、サッカー場の76倍の面積に相当する(レポート内容より)

・ミラノもC40加盟都市で、コロナの3年間に一挙に35㎞の素晴らしい自転車専用レーンを新設しシェアバイクを進めた。ちょうどその時にミラノに住んでいた私は、当時の市長の言葉「ただコロナ以前の都市に戻すのではない。どんな社会をつくりたいか、どんな都市に住みたいか?という問いかけが必要だ」という言葉に感動して、「フランスのウォーカブルシティ」執筆のきっかけの一つにもなった。イタリア語の文献は読めないので本の対象はパリになったが、当時のパリ市長イダルゴ女史はC40の議長でもあり、パリとミラノのコロナ下における都市空間の編成大改革には共通点が多く見られた。

ミラノの中心市街地における自転車専用道路は、コロナの2019年から車走行が減少した時期に、集中的に整備された

駐車スペースの転用。シドニーの発表などでは、「駐車スペースを減少することは市民の反対が大きいので、自転車専用レーンは車道を削って整備する」という意見も聞かれた

このスライドは今大会のメッセージの集約のように私には思える。意図してかどうかは分からないが、どの自治体も自転車専用レーンや自治体が管理しているシェアバイクのテーマではなく、「いかに車スペースを削って、自転車や徒歩空間を確保するか」に議論の焦点があったように思う。日本の自治体の方に参考になる発表だと思うが、果たして道路の利用者である市民の意識が、それらを受け入れる土壌を備えているだろうか?

・「公共空間は、社会や文化を体現する都市の機能性が実践される場所であり、安全で快適な公共空間の提供を通して、住民のQOL(Quolity of Life)に貢献する」、という街づくりに対する考え方が伝わってくる。これが今回のVelocityを貫くメインメッセージであったと私は感じた。日本はすでに日常生活における自転車利用度は高い。世界のサイクリストがあこがれである素晴らしい「しまなみ海道」を前面に出して、サイクルツーリズムとその地域活性化効果をメインテーマに2027愛媛大会を意図している日本側は、どのようなメッセージを用意されるのだろうか?

左側2027愛媛県グループ、右側Velocity主催団体ECFのスタッフたち

 

愛媛県知事・中村時広氏と。Velocityの開催は松山市、しまなみ海道は今治市に到着するので、松山と今治両市の市長のご参加もあった。知事が大会で発表された2つの愛媛Velocityの紹介ビデオとプレゼンは、日本の地方都市の歴史、景観(勿論、自転車を利用する人たちの自然な姿も)をあますことなく披露し、欧州人であれば誰もが是非参加してみたいと思わせる素晴らしい内容であった。私も12年前にナントのVelocityにおける山中英夫先生のしまなみ海道のプレゼンをお聞きして、いつかは、と思っていた。2024年に電動自転車ではあるが完走したが(7つの橋梁にアクセスするにはかなりの登坂がある)、5月だったので島々のレモンの花の香が印象に残っている。

go

全員集合ではないが、Velocityご参加者の皆さんと。日本人以外の今回のVelocity参加者の大半が行政の公務員であることを考えると、業務の一環として行政が登録費と旅費を負担して、日本に派遣されることを期待されているだろう。また環境意識の高い人の中には、飛行機を避けたい者もいるだろう。実際フランス政府のメンバーに、「飛行機以外の移動では日本は遠いので、日本には行けない」と言われた。できるだけ多くの方、組織に、2027愛媛Velocityに参加していただくためには、これからどのような形、方法の広報、勧誘が必要であるのか、もうその考察はこのメンバーの中でも始まっていると言ってよい。

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